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ヴェネツィア、ベネチア、それともベニス?Veneziaの表記の揺れにうんざり!

ヴェネツィアのゴンドラ

イタリア有数の観光都市ヴェネツィア(Venezia)であるが、ヴェネツィアについて調べていると、気になるのがこの都市の地名の表記方法である。

 

ネットでこの都市について調べてみる時も、「ヴェネツィア」で検索した後、念のため「ベネチア」と「ベニス」でも検索しておこうと思ってしまい、なかなか手間がかかるのである。

 

何種類もある「Venezia」の日本語表記方法

外国の地名の日本語表記は、漢字を使用する国を除き、基本的には現地語で表記された地名を、現地語の読み方で、できるだけ忠実にカタカナにするのではないかと思う。しかし、イタリア語で表記される「Venezia」という地名については、英語で表記された「Venice」から日本語へ表記されることも多く、これが「Venezia」の日本語表記の多さの原因となっている。

 

イタリアの別の都市である「フィレンツェ(Firenze)」が、日本語ではイタリア語の読み方をカタカナにした「フィレンツェ」と表記され、これが一般的な「Firenze」という地名の日本語表記となっている。そして、「Firenze」の英語表記である「Florence」を日本語表記した「フローレンス」は一般的ではない。「フローレンス」と表記したなら「スイスかフランスにある都市なのか?」なんて勘違いしてしまうのではないだろうか。

 

外国の地名を日本語にするのは、現地語の読みを基本にするのが原則ではあるが、例外もある。もっとも有名なのはタイの首都「バンコク(Bangkok)」であろう。「バンコク」は英語で表記された地名を基に、英語の読み方から日本語に表記されたものである。タイの首都「バンコク」は、タイ語では「クルンテープ」である。本当は「クルンテープ・マハナコーン…」と続く世界一長い首都名となっている。

 

ただし、バンコクの英語表記は全く根拠がないというわけではない。昔、「バンコーク」という村があり、それを英語での地名としたとされているから、それなりの理由はあるのだ。それに「バンコク」は一般的にも定着しており、「バンコーク」でも「バンコック」でもなく、「バンコク」は「バンコク」である。

 

しかし、「Venezia」の場合は事情が異なる。ウェブサイトや書籍でも「ヴェネツィア」と表記したり、「ベネチア」だったり「ベニス」だったりして、日本語での表記は一定していない。イタリア語の「Venezia」をできるだけ忠実に表記するなら「ヴェネツィア」が最も正確だと思うのだが、なぜそれ以外の表記も使用されるのか考察してみたい。

 

「ヴ」という表記の影響

「ヴ」という表記は「v」に相当する発音をできるだけ正しく表記するために、福澤諭吉が考案した表記法である。私は「ヴ」という表記法はできるだけ使わないようにしたのではなかったのではないかと思っていたのだが、それは勘違いであった。確かに以前は推奨されない表記法であったが、現在では容認されている。

 

ウィキペディア(wikipedia)によると

 

1991年(平成3年)2月7日に国語審議会が答申した「外来語の表記」では原語になるべく近く書き表そうとする場合に [v]音を「ヴ」によって表記することを容認し…

 

…小学校においては教育的配慮から「ヴ」の表記は避けることとし、中学校において一般的には「バ行」で表記されるが必要のある場合は「ヴ」で表記されることを教え、双方の読み書きができるようにする旨の指針が打ち出されている。

 

参照:ヴ - Wikipedia

 

と書かれている。

 

つまり、小学校では「Venezia」の日本語表記はイタリア語の読みに忠実な「ヴェネツィア」ではなく、「ベネツィア」等で表記されることを学ばなければならない。そして、中学生になったら、「Venezia」は「ベネツィア」と同時に「ヴェネツィア」などと表記される可能性があることも学ぶのである。

 

おそらく、この辺が「Venezia」の「Ve」を「ベ」や「ヴェ」と複数の表記方法が存在する根拠と考えられる。また、「Venezia」の「zia」については、現地語の音を忠実に表記したかどうかの違いだと推察する。

 

ベニス(ヴェニス)の商人の影響

「Ve」を表記する際、「ベ」と「ヴェ」の2つに分かれてしまう根拠は分かった。それでは、なぜ「Venezia」という名前の都市を日本語で表記する際に、英語で表記された「Venice」を基にした表記法があるのであろうか。

 

これは、シェイクスピアに有名な戯曲「ベニス(ヴェニス)の商人」の影響が大きいと考えられる。シェイクスピアの作品を読んだことがなくても、「ベニス(ヴェニス)の商人」という題名くらいは知っているだろう。おそらく、中学生の時にシェイクスピアについては勉強するのではないかと思う。

 

「ベニス(ヴェニス)の商人」は英語で書かれている。文学作品であるので、原語に忠実に翻訳することの大切さは理解できる。「ヴェネツィアの商人」ではなく、やはり「ベニス(ヴェニス)の商人」なのである。

 

「ビルマの竪琴」を「ミャンマーの竪琴」としてはしっくりこないのと同じである。この場合は国名が変更されたのであって、「ベニス(ヴェニス)の商人」とは意味合いが違うが、文学作品として考えると同じようなニュアンスだと思う。

 

「Venezia」という都市を日本語で表す時、「Venezia」の英語表記である「Venice」を基に「ベニス」、あるいは「ヴェニス」とされるのは、シェイクスピアの影響が大きいのではないかと考えられる。

 

最も使用される表記法

それでは「Venezia」を日本語で表記する時に、どの表記法が最も使用されるのであろうか。日本語の文章の中で「Venezia」を表現するのに使用されるであろう6種類の表記を選んでみた。そして、Googleで検索した場合に、どの表記で検索した時に最も検索結果が多いかを調べてみたい。

 

調査する6種類の表記は次の通りである。

  1. ヴェネツィア
  2. ベネチア
  3. ヴェネチア
  4. ベネツィア
  5. ベニス
  6. ヴェニス

 

「ヴェネツィア」で検索した場合

Googleで「ヴェネツィア」を検索すると、検索結果は約989,000件となる。

 

ここで注意しなければならないのは、Google先生は頭が良いことだ。たとえ「ヴェネツィア」で検索しても、Google先生が「関連あり」と認めれば、それを検索結果に表示するのである。そのため、「ベネチア」や「ベニス」と表記されていてもGoogle先生が「これ、ヴェネツィアだろ」と認めたならば、検索結果に反映されるということだ。

 

ヴェネツィアの検索結果

Googleで「ヴェネツィア」を検索した結果

 

「ベネチア」で検索した場合

Googleで「ベネチア」を検索すると、検索結果は約891,000件となる。「ヴェネツィア」で検索した場合の検索結果数には劣るものの、それに迫る数である。

 

ベネチアの検索結果

Googleで「ベネチア」を検索した結果

 

「ヴェネチア」で検索した場合

「ヴェネチア」で検索した場合、検索結果は約767,000件となる。意外と多いと感じた。

 

ヴェネチアの検索結果

Googleで「ヴェネチア」を検索した結果

 

「ベネツィア」で検索した場合

「ベネツィア」で検索した場合、検索結果は約216,000件である。上記3つの検索語の結果と比べ、その数は大幅に減少する。

 

ベネツィアの検索結果

Googleで「ベネツィア」を検索した結果

 

「ベニス」で検索した場合

「ベニス」で検索した場合、検索結果は約555,000件である。「ヴェネツィア」や「ベネチア」に匹敵する数かと思ったが、それ程多くはなかった。 

 

ベニスの検索結果

Googleで「ベニス」を検索した結果

 

「ヴェニス」で検索した場合

「ヴェニス」で検索した場合、検索結果は約441,000件である。同じ英語表記を基にした「ベニス」には劣るが、意外と使用されている感じだ。

 

ヴェニスの検索結果

Googleで「ヴェニス」を検索した結果

 

Googleでの検索結果

「Venezia」の6種類の表記法をGoogleで検索し、検索結果数が多い順に並べると下記のようになる(単位は1,000件)。

  1. ヴェネツィア  989
  2. ベネチア    891
  3. ヴェネチア   767
  4. ベニス     555
  5. ヴェニス    441
  6. ベネツィア   216

上記の表記法の他「ヴェネーツィア」などもあるのだが、さすがにGoogleは「もしかして:ヴェネツィア」と聞いてきた。しかし、「ヴェネーツィア」で検索されるものも、わずかながらあるのも事実である。

 

さて、ここで問題となるのは、同じ検索対象である「Venezia」に関する情報であっても、「Venezia」を「ベネツィア」と表記する方法しか知らない人が検索した場合、「ヴェネツィア」で検索した人と比べ、著しく少ない情報あるいは精度の低い情報しか得られない可能性があるということである。

 

同じ情報を得て、どのように理解し役立てるかは個々人の能力であろう。しかし、得られる情報自体が異なってしまうとなると、個々の能力ばかりともいえなくなる。ある意味、情報収集の際に不公平が生じる。

 

例えば、学校で英語を勉強する際、同じ教材を使用しているのにもかかわらず他人と成績に差が生じるのはしょうがない。これは個人の能力の差であるから。しかし、ある人は優れた教材が与えられ、その他の人は明らかに劣った教材しか与えられない場合、同じテストで優劣をつければ、優れた教材を使用したものが良い成績を取る可能性の方が高いであろう。

 

勉強する時間や環境などの諸条件が同一であるならば、テストの優劣は個々人の能力の差ではなく、教材の差ともいえる。

 

地名の表記は統一すべきでは?

以上、「Venezia」の日本語表記の多さについて考察してみた。これまでの考察で思うのは、少なくとも主要な地名に関しては日本語の表記を統一させるべきではないかということである。

 

文学作品上の地名なら注記あるいは脚注などで対処すればいいだろう。しかし、実際に現在使用されている主要な地名は1つにしておかないと、情報収集等の際無駄が生じる可能性が非常に高い。「ヴェネツィア」で検索し、「ベネチア」や「ベニス」でも検索せざるを得ないというのは、地名が統一されていない際に生じる無駄の1例であろう。

 

この際、国語審議会にがんばってもらい、「ヴェネツィアでいこう!」、あるいは「ベネチアにしよう!」と決めてもらいたいものだ。…と、こんな風に思わざるを得ないのである。