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元経理マンがチェックする舛添氏の海外出張の経費

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豪華と思える海外視察旅行に対する批判を発端に、ついには辞任に追い込まれた前東京都知事の舛添要一氏であるが、舛添氏の海外出張に使われた経費は、本当に批判されるべきものであろうか。

 

ずっと東京で働き、長く住んだことがあるものの、現在は東京都には縁がない私ではあるが、元経理マンの目から舛添氏の海外出張費を検証してみたい。

 

ロンドン、パリへの海外出張

東京都知事に就任以来、海外出張が多かった舛添氏であるが、ここでは下記のロンドンとパリへの出張を詳細に見てみよう。

 

 

www.sankei.com

 

この記事は短いながらも情報が豊富であるが、前提として全て事実と仮定する。ここでのポイントは次のことである。

 

  • 知事を含め合計20人の海外出張である
  • 知事は、移動の際ファーストクラス(約266万円)を利用した
  • 知事は、ホテルで1泊19万8千円のスイートルームを使用した
  • 合計123万円の日当が支払われている
  • 車両借り上げ費が約623万円
  • 現地ガイド(おそらく通訳も含まれていると思われる)の費用が約532万円
  • 知事の講演会の会場代が263万円
  • ラグビーワールドカップのチケット代が2試合分で約127万円

 

海外出張費の妥当性を検証

旅費規程を参照することが重要である

「舛添の海外出張、高すぎだろ!」と感情的になってしまうのは理解できる。しかし、海外出張にかかった経費の高低は重要ではない。まずは、その経費が妥当かどうかが問題なのである。

 

各企業や団体は出張に関する「旅費規程」あるいは「出張規定」を文書で定めているのが普通である。そこでは、出張の際の経費は何が認められるか、出張した場合に日当はいくら支払うかなどが記載されている。

 

もちろん、一般企業同様、東京都にも旅費や出張に関する規定がある。東京都の場合は「条例」となっている。今回の海外出張にかかわりがあるのは、「職員の旅費に関する条例」と「東京都知事等の給料等に関する条例」なので、まずはこの2つの条例を参照したい。 

 

職員の旅費に関する条例

 

東京都知事等の給料等に関する条例

 

知事がファーストクラスを使うのは是か非か?

舛添氏はロンドン、パリへの出張の際ファーストクラスを使用した。「ファーストクラスなんか使いやがって、贅沢だ!」と怒りを覚える人が多いのではなかろうか。その気持ちは分かるが、「東京都知事等の給料等に関する条例」を見てみよう。この条例の別表(二)に「鉄道賃、船賃及び外国旅行の航空賃」があり、ここに知事が外国を旅行する際に利用できる航空機内での座席のクラスが記されている。

 

別表(二)の「鉄道賃、船賃及び外国旅行の航空賃」の中に「外国旅行の航空賃」という項目があり、知事が利用できるクラスは「運賃の等級を二以上の階級に区分する航空路による旅行の場合は、最上級の運賃の範囲内の実費額」と規定されている。

 

これは、もし航空機内で2つ以上のクラスがあるなら、知事は1番いいクラスを選んでいいということだ。例えば、該当する航空機にエコノミークラスとビジネスクラスがあればビジネスクラスを、エコノミークラスやビジネスクラスに加えファーストクラスがあれば、知事はファーストクラスに乗れることになる。

つまり、舛添氏が海外出張の際ファーストクラスを利用したことは、条例上問題はない。これをもって彼を非難することはできないのである。東京都知事が海外出張の際にファーストクラスを利用することが不服なら、東京都民は条例を変えなくてはならない。

 

スイートルームを利用した宿泊費

知事がファーストクラスを利用することについては問題がないことが分かった。それでは宿泊費はどうだろうか。記事には「一流ホテル」とか「スイートルーム」などと書かれているが、このような修飾語は考えない方がいい。あくまでも金額の妥当性が問題だからだ。

 

それでは「東京都知事等の給料等に関する条例」を見てみよう。この条例の別表(五)に「外国旅行の日当、宿泊料及び食卓料」がある。ここで規定されている知事の宿泊費の最高額は40,200円である。

 

記事では、知事は1泊19万8千円を使用したとされている。これが事実なら、舛添氏は下記の式で求められる78万9千円を東京都に返還しなくてはならない。

 

(198,000-40,200) × 5泊 = 789,000

 

ただし、舛添氏が差額分の789,000円を自腹で支払った場合は問題ない。差額の789,000円が東京都の経費として計上されている場合、舛添氏のモラルも問題であるが、一般企業の経理部門に相当する東京都の部署も問題である。条例を無視しているからである。

宿泊費に関しては、担当部署で問題視し、条例で定められた以上の金額は支払わない(経費精算をしない)という手段で解決すべきであったと思う。

 

日当の妥当性

日当に関しては条例に基づいて支払っているものと思われるが、東京都は日当の他に「食卓料」というものを支払っている。

 

日当が「一日につき」とされているのに対し、食卓料は「一夜につき」とあるので夕食のことのように思われるが、「職員の旅費に関する条例」を詳細に見てみると、第26条第2項で「食卓料は、鉄道賃、船賃、航空賃若しくは車賃のほかに別に食費を要する場合、又は鉄道賃、船賃、航空賃、車賃若しくは宿泊料を要しないが食費を要する場合に限り、支給する。」とあるので、1日当たりの食費の手当てと考えられる。

 

東京都は食事に関して補助している。これが規定された額を超えない範囲の実費なのか、それとも定額なのかかが分からなかったが、「職員の旅費に関する条例」の第6条第9項に「食卓料は、旅行中の夜数に応じ一夜当たりの定額により支給する」とあるので定額を支給することが分かる。

 

ここで問題となりうることがいくつかある。

 

まず、食卓料は適切に支払われていたかということである。「食卓料は、鉄道賃、船賃、航空賃若しくは車賃のほかに別に食費を要する場合」に「支給する。」のである。

 

もし、会議などの名目で食事を用意した場合、これは会議費あるいは交際費等になる可能性が高い。この場合、各個人の食事は必要ないので、食卓料を支払う必要はないということになる。もし手当としてこの分の食卓料を支払っているなら、食事代の2重取りとなる。

 

次に、ホテルでの朝食である。ホテルによっては、朝食は宿泊者に対する無料で提供するサービスとして、宿泊費と朝食代の区別がつかないこともある。しかし、朝食代が明らかに宿泊費と区分されるなら、その朝食代は食卓料に含まれる。この場合、朝食代を宿泊費で計上し、その上食卓料を支払っているなら、上記同様食事代の2重取りになる。

 

高すぎる車両費とガイドなどの経費

記事には車両借り上げ費が623万、ガイドと通訳にかかった経費が532万とある。実質6日の出張であるから、現地での移動に使ったであろう車のレンタル費用は、1日当たり100万円を超えることになる。ガイド1名と通訳1名を含めて総勢22名の移動であり、バス1台かミニバン3台を借りれば済むことである。もちろん運転手も必要であるが、1日に100万円は高すぎである。

 

また、ガイドと通訳であるが、これも1日当たり88万円と高額である。確かに優秀な通訳ならそれほど安くはないが、ガイド1名と通訳1名で1日88万円は高すぎる。

 

これらの経費は内訳を詳細に確認する必要がある。車やガイドを手配する会社に、現地でのどんちゃん騒ぎに使用する場所を同時に手配してもらい、冗費をこのような項目に入れてしまう可能性もあるからだ。

 

講演会の会場代って?

これがよく分からない。いろいろな可能性を考えてみると、舛添氏がホテルなどで講演を行い、講演終了後参加者と立食パーティーでも行ったのであろう。この経費の是非は判断しかねる。

 

2試合も必要ない、ラグビー観戦

2019年は日本でラグビーワールドカップが開催される。そのための視察と考えられるラグビーワールドカップのチケット代が2試合分で約127万円が計上されている。

 

オリンピックが都市単位の開催となるのに対し、ラグビーワールドカップは国単位の開催である。そのため、1つの自治体が単独で試合観戦というのはいかがなものかと思うが、日本のみならずアジアで初めて開催されるラグビーワールドカップである。国のイベントしては結構重要である。

 

ラグビーワールドカップの決勝は東京にできる新国立競技場になるので、視察という名目の試合観戦自体は妥当性あると判断できる。しかし、2試合はない。1試合で十分である。しかも、視察が本当に必要なのは、知事ではなく治安を担当する警察等である。

 

海外出張の目的が妥当であるかがより重要

上記で知事の海外出張にかかわる経費の妥当性を検証してきたが、使用された経費がいくらかを論ずる前にもっと重要なことがある。海外出張、あるいは海外視察自体に妥当性があるかどうかである。

 

昨今、一般企業では海外出張に対しては、かなり厳しい。私が勤務していたアメリカ系の企業でも、海外出張は本社のCFO(最高財務責任者)の許可が必要であった。

 

彼は都市外交と称していたが、目的の定まらない旅行は無駄な経費である。例えば姉妹都市と定期的に交流するのが慣例となっているなどの名目がない場合、単なる観光旅行と批判されてもしょうがないであろう。

 

ここで取り上げたロンドンとパリの視察旅行であるが、ロンドンは数年前にオリンピックを開催し、ラグビーワールドカップもイングランドで開催されていたので、知事が視察に行くのは適切とは思えないが、ぎりぎり視察の名目はある。

 

しかし、パリは別だろう。舛添氏はフランスに興味がありそうなので、特に用事もないのについでにパリに行ったと思われても仕方がない。東京都はこれらの海外出張に関し、具体的な目的を明らかにする必要がある。

 

舛添氏辞任と今後の東京都知事

都市外交を名目に海外出張を重ねた舛添氏だが、私は「舛添、遊びすぎだろ」と思っていた。そして、さすがに図に乗りすぎたようだ。

 

舛添氏の辞任は高価な海外出張だけが要因ではない。その他にもずるずると問題が出てきたためである。評論家時代から自己顕示欲が強く、多少性格に難のある人だと思っていたが、政治家になってからは一層ひどくなったようだ。

 

知事を辞任したからといって、これで終わりというわけではない。上記のホテルの宿泊代など、必要以上に使った冗費は東京都に返すべきである。これは舛添氏だけでなく、同行した職員に該当する者がいる場合は、その職員も同様である。

 

舛添氏の辞任に伴い、新しい都知事を選ぶことになるが、東京都民は知事が海外出張する際、「あの人ならファーストクラスに乗っても納得」と思えるような人を、知事を選ぶ際の基準の1つにしてもいいのではないだろうか。